フォント : Nu ツルンコイマイ

ニンテンドウ 64 の『ゼルダの伝説 : 時のオカリナ』と『ムジュラの仮面』の作中世界で使われているハイリア文字を、原作のビットマップに従ってほぼ忠実な形に再現したフォントです。日本語の平仮名・片仮名に対応しているので、平仮名・片仮名の領域にグリフを割り当ててあります。なお、仮名として解読できるハイリア文字と言ったら恐らく『風のタクト』の方が有名かと思いますが、それとは別物です。

お使いのブラウザーが対応していれば、次の書体見本を自由に書き替えられます。

シーでおねがいします なにかをうってください

作中での位置付け

『時のオカリナ』では、例えばカカリコ村の門に「かかりこむら」、ロンロン牧場の門に「ろんろんほくしよう」、汎用の木製看板に「にんてんとう」といった用例が見られます。ただ、このように意味が通る部分はむしろ稀で、多くは無意味な文字列が書いてあります。宿屋ではない所に「やとや」と書いてあったり、碑文の内容が「たちつてとなにぬねの…」だったり。『ムジュラの仮面』のクロックタウンにも用例は多いのですが、「こゆ」「つるんこいまい」「りこまこり」など無意味な文字列に終始しています(フォント名の由来です)。

カカリコ村の門には「かかりこむら」と書いてあります。
ロンロン牧場の門には「ろんろんほくしよう」と書いてあります。
各地に立っている木製看板は「にんてんとう」と読めます。

そもそも発売当時はプレイヤー向けに文字の説明が全くなかったので、大半のプレイヤーは解読可能と認識していなかった筈です(筆者含む)。つまり実際の所、「解読させるというアイデアがあったが、開発の途中で没になり、それ以降は単なる飾りとして使われた」という感じに見受けられます。

『時のオカリナ』の内部データを解析した人の報告によると、このハイリア文字の全グリフが(風のタクトみたいに)メッセージウインドウに表示できる形式で残っているそうです(→ The Cutting Room Floor)。Nu ツルンコイマイは主にこうした資料を参考にしてグリフを再現しました。

ロクヨン版『ムジュラの仮面』のミルクバー。「つるんこいまい / ゆる まむ / こさい」と読めます。
3DS‐版『ムジュラの仮面 3D』のミルクバー。「さんちちよくそう / みるく はあ / らつて」と読めます。

ロクヨンゼルダの二作品はニンテンドー 3DS で『時のオカリナ 3D』『ムジュラの仮面 3D』としてリメイクされましたが、その際にハイリア文字も改めて手入れされて、晴れて色んな所に使われるようになりました。ロクヨンの時点で無意味文字列が書いてあった部分は意味の分かる言葉に置き替えられ、原作になかった貼り紙なども増えて解読の楽しみが増えました。今では『ハイラルヒストリア』にも文字表が載ってるそうですし、結構 認知度が上がってるかも知れません。

ちなみに、ロクヨンの低解像度テクスチャーで描けるようにデザインされているお陰で、ドットマトリクスに非常に効率良く表示できます。

上段は「まもなく 3 ばんせんに でんしやが まいります」と書いてあります。

類似書体について

従来、ロクヨンのハイリア文字を描いたフォントは二種類ほど出回っています。一つは Omniglot というサイトで配布されている物、もう一つは「Hylian 64 by BRPXQZME」として頒布されている物です。どちらも「忠実な再現」というわけではなく、独特の解釈で字形を作ってあるようです。また、これらのフォントは仮名(あ、い、う…)ではなくラテン文字(A、B、C…)の領域にグリフを割り当てています。仮名との対応に従ってグリフを割り当てたフォントは、知る限りでは今まで存在しません。

原作との関係

フォントに収録されているグリフは基本的には原作に従っていますが、原作にない要素も含みます。原作の再現をしようとする場合、以下の点を留意して下さい。

長音の表記

ハイリア文字に長音記号(ー)は存在しません。作中の用例では「ドッグレース → とつくれえす」「ミルクバー → みるくはあ」「ボートクルーズ → ほおとくるうす」(ムジュラ 3D)のように母音字(アイウエオ)を連ねて書く事が多いです。オ段の長音についてはオオと書くほか、「トライフォース → とらいふおうす」(時オカ 64)のようにオウと書いた例も少しあります。また「クルーズマップ → くすまつふ」「ロマニー → ろま」(ムジュラ 3D)のように長音が表記されない例もあります。

このフォントでは一応横棒のグリフを収録してありますが、そのまま使うのは全くオススメしません。お使いのアプリケーションが OpenType の文脈置換(contextual substitution)に対応していれば、例えば「そー」という文字列が自動的に「そお」に置き替わって表示されます。もし対応していなかったら「そー」がそのまま表示されてしまうので、手動で「そお」と書いて下さい。

濁音の表記

濁点・半濁点は原作には存在せず、ガギグゲゴはカキクケコと同じ字で表されます。このフォントでは便宜的な拡張として、濁点などを付加したグリフを収録してあります。公式な根拠は全くありません。公式作品に合わせたい場合は、「せるたのてんせつ」のように濁点なしで書いて下さい。

片仮名のグリフ

片仮名には下線が付くようにしてあります。これも便宜上の物であって、原作由来ではありません。公式作品に忠実な使い方をしたい場合は、平仮名のみで書いて下さい。

ゐ・ゑ

原作のハイリア文字に〈ゐ〉〈ゑ〉は見られません。これらの符号位置には〈い〉〈え〉と同じグリフを割り当ててあります。

小書きの仮名

小書きの仮名(捨て仮名、ぁ ぃ ぅ ぇ ぉ ゃ ゅ ょ っ ゎ)は原作では基本的に現れず、大きい字が使われます。このフォントも、例えば〈っ〉には〈つ〉と同じグリフを割り当ててあります。但し『ムジュラの仮面 3D』では、「げばひょう」の〈ょ〉を小さく書いた非常に珍しい用例も見られます。

分かち書き

原作は文字の間にあまり空白を置きません。でも多少区切ってある例もあります。一定の決まりはないので、適度に切ればいいと思います。

句読点類

句読点(、 。)は先述の『時のオカリナ』未使用データに含まれる物を再現してありますが、プレイ中の画面上に見える形での実際の用例は存在しません。また、中黒(・)は原作に存在しませんが、オマケとして入っています。

収録字種

収録グリフのうち、濁点のない平仮名の見本。

利用条件

このフォント(Nu ツルンコイマイ v1.0.1)は原作『時のオカリナ』『ムジュラの仮面』で描かれている字形をほぼ忠実に再現した物であって、作者(さゆぬ)の独自の創作をほとんど含みません(なるべく使いやすいように工夫してはいますが)。そこで、利用条件は次の通りとします。

一般的許諾

このフォントの作者は、このフォントデータの利用について制限的な規則を設けません。しかし、このフォントの使用が原作者の権利の侵害とならない事を保証しません。

免責

このフォントの使用によって何らかの損害が生じた場合、フォント作者はその責任を負いません。

フォントの入手

このフォントは Pixiv が運営している Booth という外部サイトで頒布しています。初回は利用者登録が必要ですが、単純ですし、ほかの方々のフォントも陳列されているので見に行ってみて下さい。