一章
5
暗闇の中に揺らめく、蠟燭の
奥行き・幅は共に五歩ぐらい。天井は低く、二人でも
壁の一つに面して、腰程の高さの祭壇の様な物が設置され、蠟燭立ては其の上面の左右の端に置かれている。二つの蠟燭の間では、無造作に並べられた、金属製の
「ああ、見つからない」
首を左右に振り
「早く捜し出して、捕まえちゃわないと…コウノトリよりも先に」
身を起こし、翳した手をゆっくり動かし乍ら、口の中で再び呪文を唱え始める。
其の時、男の背後の真っ暗な壁の、向こう側から声が聞こえた。
「カメック様ー、棟梁ヘイホーです。すみません、そろそろこの辺りも造り始めますんで、」
突然、壁の中央が縦に裂ける。一瞬にして、光の筋が部屋全体を明るく照らした。
「あっ、またロウソク立てて! 火事になるからやめて下さいと…」
全身をだぶだぶの赤い服で包み、白い仮面を被った、極めて背の低い人物が立っていた。而しカメックと呼ばれた男は気付かないらしく、相変わらず水晶玉を見詰めて
「カメック様っ、テントを移動して下さい!」
と突如、天井がビリビリと音を立てて裂け、太い角材が数本
「うわぁカメック様っ! コラ、基礎を作る前に柱を立てる奴ぐおッ」と上へ怒鳴ったヘイホーの頭にも小さい角材が命中、乾いた土と砂との地面に倒れ込んだ。半壊した白いテントの周りに土埃が舞い上がる。
「あ…んぜん、第一だ、ぞ…。」
「あー、すぃあせーん。」
既に周囲に組まれ始めていた梁の上から、ノコノコの気の抜けた声が聞こえた。
「何なの、一体…」
暫くして、一度組まれた柱が忽ち解体された後、カメックが這う様にしてシートの切れ目から顔を出した。
「あら、木造なの?」
「…はい、この一帯は。今テントが建っていた辺りは茶室になります。」
起き上がった棟梁ヘイホーが、痛そうに頭をさする。
「茶室ねぇ…。」
其の
「カメック様! 居場所が判明しました!」
「何!? よくやったわ!」
其れを聞くや否やガバッと起き上がったカメックは、再びテントの中に潜ると、直ぐ竹箒を片手に持って現れた。
「案内なさい。待ってなさいよ、マリオちゃん!」
箒に跨がったカメックは、地を蹴って勢い良く曇り空に飛び上がった。パタパタは